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2007年9月 4日 (火)

夢で、走る

夜の動物園のライオンを、テレビで見たことがある。寝ながら、足を激しく動かしてた、まるで草原を翔ってるように。

そのとき、ライオンは夢の中で走っているんだって。

そういえば、翔もよくする。あれはやっぱり、夢の中で走ってたんだ。

若いとき、翔は近くの森でよく全力疾走した。ふだんのおとなしい顔が別人のようにきりりとしまって、キツネ顔になって、すごくかっこよかった。

心臓が弱くなって、薬ものむようになったこの数年間は、もう森で放せない。たちまちキツネになって、疾走するもの。

でもきっと、森を翔ける憧れはずっと翔のなかにあって、夢でそれをしてるんだ。ときにはシャカシャカシャカと、足で床を蹴ることまでして。

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今年に入ってからは、翔の寝てる時間が多くなった。ときどき薄目をあけたまま寝ている。寝てるのかな、って思って近づくと、ただ横になって考えごとをしてるときもある。きっと哲学してるのだ。

きのうも、目をあけたまま横になってた。そして走ってた。これは夢か、本物か、確かめたくて近づいたら、しっかり寝ていて、夢で走ってた。

翔、翔、って呼んでも、目をあけたまま、目をさまさず、走り続ける。ふいに、翔がどこか遠くに行ってしまった気がして、こわくなって、翔、翔、って名前を呼んだ。

夢見ているの?翔、お願い、起きて。翔。

そのとき急に、翔の瞳に光がやどって、一瞬で夢から醒めた。

え?なに、今、わたし、何してた?

まるで突然、催眠術からさめたみたいに、きょとんとしている。いつものくりくりのまんまるい目で、わたしを見ている。

ああ、、、よかった。

翔が夢からさめて。翔が遠くに行かないで。

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