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2008年1月11日 (金)

有り難かったこと

           

お薄の日には、東京から来ためずらしいお客さんも二人まじってた。もちろん紅茶ははじめて。dewさん(本名は、つゆさん。彼女をこんなふうに呼ぶのはたぶん私だけ)は、実は雑誌の取材でみえた。写真をとるひとと一緒に。

dewさんはちいさいころから、ものを書くひとになりたかったのだそうだ。「てのひらごよみ」という本で私のことを知って、お手紙くれたのは彼女が中1のとき。返事をかいて、時おりお手紙がきて、私もまた返事をかいて。

彼女はふるさとの高校を卒業後、東京で編集をまなぶ学校にはいり、そういう仕事につき、そしてずっと、言葉にかかわる仕事をしてきた。彼女からの年賀状がとぎれなかったので、か細い糸もきれることがなかった。

4,5年前、西東京紅茶にきてくれたのが、dewさんとの初対面。おとといで逢うのは2度目。初の手紙から数えれば、30年という時間が流れてた。夢みたいだけど、願ってるとほんとにかなうんですね、とdewさんが言う。

               *****

午後のお薄の時間がはじまるまえにインタビューをうけて、若いころのことをあれこれ聞かれたのだけど、私は彼女とは違って、書くひとになろう、と思ったことはまったくなかったことに、あらためて気づいた。

ただ、中高生のころは、書くことでしか、自分の胸のうちをさらけだす場がなかっただけ。それがいつのまにか、書くことで自分を表現することにつながっていったということ。

そして今してることのほとんどすべて、目標があったわけでは決してなくて、その時々の、自分にとっての必要や必然やまわりからのニーズがあって、続けてきたこと。気づいたらいつのまにかそれが私の「しごと」になっていったよ、というだけ。

             *****

就職活動もせず、学校をでて就職もせず、あのころの私はいったい何やってたんだ。同級生ですでに結婚相手のきまってるひとは、就職しなくても当時ヘンじゃなかったけど、そんな気(ケ)のまったくない私が、就職もしないというのは、今考えると、世間の常識からは相当、あきらかに、ヘンだ。

今ならあれを、フリーターと呼ぶんだろう。服やさんでバイトしながら、詩集をつくった。それを画材やさんにおいてもらった。ビー玉でネックレスをつくって、お店においてもらった。ひょんなことからコマーシャルも書いてた。

ただただありがたかったのは、そういう私に、53歳も年の差のある父が説教しなかったことだ。私のヘンさや頑固さを、とうてい理解しがたいがゆえに「理解」するしかなくて、いい意味であきらめてくれてたことだ。父親が世間体を優先する人だったら、あんな生き方はとうてい認めてもらえなかったろう。

最近読んだ本、『ひきこもりの<ゴール> 「就労」でもなく「対人関係」でもなく』(青弓社 石川良子)の中に、「親がひきこもらせてくれなかったら、死んでたと思う」という言葉があって、ガツン、と来たことを思い出した。

その若者が、ひきこもらせてくれてありがたかった、と感じたように、私も、あのころの、あんなにもいいかげんな私を私のままで認めてくれてたこと、文字通り、有り難かった、と父や姉に言いたいと思う。

少し前の「きもち」に、私よりずっと誠実に、生きるということを深く考える若いひとたち、と書いたのは、だから、謙遜でもなんでもない、本当のことです。

そんないいかげんな私でも生きてこれたことを、まじめに誠実すぎて苦しいどこかの誰かに、正直にうちあけることもまた、私のしごとの一つかもしれない、ね。

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コメント

スウさん、こんばんは!
mamet=スウさんと同じ姓=nagoya=ミミのワンコママ
と申しましたら、お分かりですか?
素敵な封筒リサイクルで、いのみら通信を送ってくださってありがとうございました。
てのひらごよみ〜のこと私も覚えています。
スウさんのファンとして、私もいつかお会いできる日が来ることを、願っている一人です。^^
ミミのブログをエキサイトさんにお引っ越ししました。
私も胡桃の殻に羊毛を詰めた針山を作っています。

投稿: mamet | 2008年1月11日 (金) 21時12分

mametさん

はい、どなたかもちろんすぐにわかりましたよ。
てのひらごよみの共通点があったんですね。胡桃の共通点もあり。わたしもちいさな針山をつくろうと思ってたとこです。殻あわせ以外の、孤独な殻を針山にしてあげようと思います。

私のあたらしい日記の一ページには、みおちゃんと並んでうつってる娘の写真がはってありますよ、みおちゃんのお義兄ちゃんがとってくれた一枚で、ふたりともとってもいい顔しています。

また、のんびりいのみらでお会いしましょう。

投稿: sue | 2008年1月12日 (土) 07時38分

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