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2017年5月12日 (金)

まついのりこさんのご本から

昨日5月11日は津幡図書館で月一回の、詩を楽しむ時間という小さな読書会の日。

川崎洋さんが選んで編んだ、「子どもの情景」という連詩がとってもよかった。いろんな子どもたちの、ほんの二行ほどの詩を、連ねて読むと、こんなにおもしろいのか、いきいきするのか、楽しくよみながら、そこに子どもたちの情景がまざまざとうかびあがってくる。

この日、わたしが持ち込んだのは、詩集でないけど、仲間たちと輪読したくて、この一冊。
絵本作家&紙芝居作家の、まついのりこさんが書かれたエッセイ集「あの日の空の青を」から二つの小さな読みものを。


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今年2月になくなられたのりこさん。このご本は、私自身、勇気が減ってきたな〜、と感じる時にこれまで何度も読み返してきた本です。

二つの読み物のうちの一つは、「心の成人式」。のりこさんが14歳の時のおはなしです。戦争がおわって3年目のころ。

大学で経済を教えてらして、また大学図書館の館長さんでもあったお父様が、のりこさんを夜の図書館につれていって、のりこさんの読みたい一冊を自由に選ばせてくださったというお話。
その時のほこらしいきもち、自分を一人の人間としてみとめてもらえたよろこび。そのことを、のりこさんは、あれは父がわたしにしてくれた心の成人式だった、と。
(のりこさんが20歳になった時、すでにお父様はなくなられていた。経済学者ゆえにこの戦争は負けるとわかっていて、授業でそのような話をしたことが治安維持法にふれて、牢獄に入れられ、戦後に解放された時にはずいぶんお身体が弱っておられたという)

のりこさんは、小さな「心の成人式」が毎日毎日図書館の中で行われているのだとわたしは思う、と書いている。

図書館は民主主義のかなめ、自由に読みたい本を選んで自分の知りたいことを学べる場所。ナチスが図書館の本を燃やしたのは、それだけ本に力があると恐れたからではなかったか。
民主主義と図書館は、わたしの中でつながっていたけど、成人式とはつながってなかったから、この文章をはじめて読んだ時にとっても心に残っていたんだ。

もう一つの読み物は「ほんとうの教育費」。これは、のりこさんの次女の朝子さんが、やはり14歳の時のおはなし。そのころからパントマイミストになることをきめていた朝子さんは、それまで通っていた中学が変質していくのをみて、自分なりに行動もし、先生とも話しあったけれども、その高校にすすんで二週間後に退学した。理想を求める姿がないその学校では、もう学んでいくことができないと。

井の頭公園近くに生まれたフリースクール「寺子屋学園」。親たちは一口2千円の縁の下費をはらって、その学園を支えたという。
子どもたちが本当に人間らしく伸びていこうとしている学びの場に出すお金こそ、ほんとうの教育費ではないか、とのりこさんは書いている。ああ、これって中学高校の子どもだけにかぎらない話だなあ、と思いながら読みかえしました。(その寺子屋は、自由の森学園のうまれるもとになった場でもあったと思います)

朝子さんはその後もずっとパントマイミストとして今を生きています。金沢で何度も舞台で演じてもらいました。一度は金沢能楽堂の舞台でも(1980年代、能楽堂でのマイムは日本初!)。

かつて寺子屋学園のあったその場所は今、朝子さんのマイムのスタジオにもなっている。5月の連休の二日間、朝子さんは自分のスタジオで、のりこさんを偲ぶパントマイムを演じて、娘夫婦がそれを見に行かせてもらいました。
マイムのあとに、のりこさんの長女で壁画家のエイコさんから、のりこさんの最期の日々のお話があり、つづいて朝子さんが、この本から、「ほんとうの教育費」を朗読したそうです。

そんな話を聞いていたのでね、今月の詩の時間には、ぜひともこのお話を仲間と輪読したかったのでした。

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